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福島地方裁判所 昭和43年(わ)58号 判決 1968年8月09日

本店所在地

郡山市中町一三番一号

商号

合名会社 うすい

代表者氏名

代表社員 薄井典夫

本籍

郡山市中町三〇番地

住居

同市細沼町一二番一二号

会社役員

薄井斉

昭和二年八月一八日生

右合名会社うすいおよび薄井斉に対する各法人税法違反被告事件につき、当栽判所は、検察官長山頼興出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人合名会社うすいを罰金七〇〇万円に、

被告人薄井斉を懲役八月に処する。

但し、被告人薄井斉に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人合名会社うすいは郡山市中町一三番一号に本店を置き、不動産賃貸業、倉庫賃貸業などを目的とする資本金二、八〇〇万円の合名会社で昭和四二年初めまで百貨店業を営んでいたものであり、被告人薄井斉は、右会社の社員としてその経理、会計、庶務、仕入等の事務を統括する地位にあつたものであるが、被告人会社に対する法人税を免れる目的をもつて、売上および雑収入の一部を公表帳簿から除外し、架空仕入を公表帳簿に計上するなどの不正の手段によりその所得の一部を秘匿し、

第一、被告人会社の昭和三九年三月一日から昭和四〇年二月二八日までの事業年度における実際の所得金額が六、八六二万八、四四六円で、これに対する法人税額が二、五三九万九、四〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四〇年四月三〇日所轄郡山税務署長に対し、所得金額が一、一五五万三、四四九円で、これに対する法人税額が三七一万七、一五〇円である旨虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額二、一六八万二、二〇〇円をほ脱し

第二、被告人会社の昭和四〇年三月一日から昭和四一年二月二八日までの事業年度における実際の所得金額が八、一七四万五、七三九円で、これに対する法人税額が二、九一六万八、二〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四一年四月三〇日所轄郡山税務署長に対し、所得金額が四、七一三万六、五三六円でこれに対する法人税額が一、六三六万五、三三〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額一、二八〇万二、八〇〇円をほ脱し、

第三、被告人会社の昭和四一年三月一日から昭和四二年二月二八日までの事業年度における実際の所得金額が一億五、五八一万四、三二二円で、これに対する法人税額が五、〇六三万五、七〇〇円であつたのにかかわらず、昭和四二年五月一日所轄郡山税務署長に対し、所得金額が一億二、六七一万一、三三三円でこれに対する法人税額が四、〇四五万四、三三〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて被告人会社の右事業年度の正規の法人税額との差額一、〇一八万一、三〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

右判示各事実は

一、被告人会社代表者薄井典夫ならびに被告人薄井斉の当公判廷における各供述

一、被告人薄井斉の大蔵事務官に対する質問てん末書二〇通ならびに検察官に対する供述調書一通

一、被告人薄井斉作成の上申書七通

一、木野守成、大塚末義、薄井典夫の検察官に対する各供述調書

一、木野守成、大塚末義、藤田清太郎、鈴木昌(三通)、豊沢良郎(二通)、宮沢辰三(一〇通)、薄井晋(三通)、薄井典夫(二通)、鈴木八郎右エ門の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一、木野守成(三通)、逸見昌男、島津貫二、大城戸質、坂井幸三郎、森谷俊男、薄井今朝一、鈴木昌(二通)、宮沢辰三(三通)、石川淳已、鈴木八郎右ヱ門(二通)、北倉裕、佐々木尚一、沼田正敏、斎藤孝雄、谷田貝勉、米田昭三、津田康信、山村信也、西山吉治、中村隆一、山我明各作成の上申書

一、大蔵事務官渡部信一作成の脱税額計算書三通、銀行調査書、法人税決議書謄本、法人税修正申告書謄本三通

一、大蔵事務官佐藤忠夫作成の三五期架空仕入架空買掛金調査書、銀行預金および受取利息調査表

一、大蔵事務官瀬川永作成の簿外売上売掛金調査書

一、大蔵事務官伊勢昭郎作成の未納事業税額計算書三通

一、登記官吏清水忠雄作成の登記簿謄本

一、押収にかかる法人税額確定申告書四綴(昭和四三年押第三六号の一ないし四)

を総合してこれを認める。

(法令の適用)

被告人会社の判示第一の所為は昭和四〇年法律第三四号附則第一九条により同法による改正前の法人税法第五一条第一項、第四八条第一項に、判示第二、第三の各所為は法人税法第一六四第一項、第一五九条第一項に該当するが以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから同法第四八条第二項により各罪所定の罰金の合算額の範囲内で被告人会社を罰金七〇〇万円に処し、被告人薄井斉の判示第一の所為は昭和四〇年法律第三四号附則第一九条により同法による改正前の法人税法第四八条第一項に、判示第二、第三の各所為は法人税法第一五九条第一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、同法第四七条本文、第一〇条により犯情最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で同被告人を懲役八月に処し、なお諸般の情状に鑑み同法第二五条第一項を適用し、同被告人に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予することとする。

よつて主分のとおり判決する。

(裁判長裁判官 金末和雄 裁判官 野口喜蔵 裁判官 中野保昭)

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